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第二夜(後編)
「総吾さん、僕を抱いておいてそのまま逃げるのは卑怯だよ。責任、取ってよね」
けっして大声とまではいかない彼の声は、けれども周囲をざわつかせるほど十分な内容だった。
――さて、彼はいったい何と言ったのだろうか。
閏を抱きたいという欲望と葛藤する総吾の耳はあまりにも自分の都合の良いように解釈してしまいそうになる。
これはよくない兆候だ。おそらくは如月 閏という昨夜の食事で力を蓄えた鬼が総吾の霊力を蝕んでいるに違いない。
総吾の内に棲む鬼が総吾の意思さえも乗っ取ろうとしているのなら、阻止せねばならない。
「……ただの気の迷いだ」
声色や表情には出さず、突き放すようにそう言った。しかし彼は納得しない。
その日から、総吾は事ある毎に閏に付きまとわれることになった。
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