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第2話
「と、Trick or Treat?」
ちょっと噛みつつも、僕は帰ってきたばかりの先輩に向かって決まり文句を口にした。
ハロウィンでお菓子をねだる側が家主を出迎えるというのも変な話だが、この服で外に出るのは絶対無理なので勘弁してもらうことにする。
コスプレで出迎えた僕に、先輩はさすがに驚いたようだったが、すぐに復活した。
僕の姿を頭のてっぺんからつま先まで舐めるように眺めると、ものすごく嬉しそうな顔になる。
僕が選んだ衣装は悪魔風のものだった。
そしてそれは当然、先輩の趣味に合わせたレディース仕様のものだ。
頭には触角っぽい角の付いたカチューシャ、背中にリュックみたいに背負うタイプの黒いコウモリの羽、そして黒のエナメル風で肩とへそが出る露出度高めのトップスに、同じく黒の薄い生地が何枚も重なったミニスカート、そして紫地に黒のコウモリ柄のタイツをはいている。
当然タイツは膝上のもので、スカートとの間に絶対領域を作るのも忘れない。
はっきり言ってあざとすぎるくらいの衣装だったが、やはり先輩の好みにはあっていたらしい。
「そりゃ当然、お菓子よりイタズラだろ。
あ、けど、手を洗って来るからちょっと待て」
そう言った先輩はカバンを放り出して、あっと言う間に手洗いうがいを済ませてくると、僕を引っ張って寝室に移動した。
「あーヤバい、高橋それ、めっちゃかわいい。
テレビでアイドルが似たようなの着てるのも見たけど、高橋の方が断然かわいい」
先輩の手放しの褒め言葉と満面の笑みに、僕もがんばったかいがあったと嬉しくなる。
先輩におだてられるままにくるりと一周したり、小悪魔風のポーズをとってみせたり、あげくの果てには絶対に誰にも見せないという条件で写真を撮ることまで許してしまった。
先輩は大喜びで一通り写真を撮ると満足したらしく、スマホを置いて「さて」と言った。
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