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第4話☆
「なあ、高橋。
さっきから気になってたんだけど、その胸、なんか入れてるの?」
「え? ああ、タオル丸めて入れてます」
「ふーん、どれどれ……」
先輩は興味深そうにつぶやくと、僕の作り物の胸に触ってきた。
最初は衣装の上からその感触を確かめていたものの、そのうちに衣装の上側から手を入れて詰め物の具合を確かめ始め、ついには詰めていたタオルを引っ張り出してしまった。
「ちょっ、先輩、出さないでくださいよ。
こう見えてもいい感じに詰めるの、結構苦労したんですから」
「あー、うーん……。
けど、俺、どっちかっていうと何も詰めない方が好きなんだよな。
『女装してるけど男なの!』って感じがして」
「えー、そうなんですか……」
そう言われてみれば、先輩にねだられて何度も女装しているが、胸に詰め物をしたことはなかった気がする。
先輩の好みは結構知っているつもりだったけど、先輩のこだわりは妙に偏っていて、まだまだ僕が理解できていない部分も多い。
「そうなんだよ!
それに女物の服を詰め物なしで着ると、胸に空間が出来るのがいいんだよな。
こうやって触りやすいから」
そう言うと先輩は隙間が出来た衣装の胸に上側から手をつっこんで、僕の両乳首をつまんでクリクリといじり始めた。
「えっ、…んんっ、……あっ…」
弱い乳首をいやらしく触られて、僕はたちまち感じ始めて喘ぎ声をあげてしまう。
「……っ、やっ……、先輩待って……、これじゃ、僕じゃなくて、先輩がっ、いたずらしてるみたい……」
僕が切れ切れに抗議しても、先輩は手を止めてくれない。
「うーん、それはそうなんだけどなぁ……。
けど、高橋があんまりかわいいから、いたずらされるの待っていられなくって」
そう言うと先輩はようやく手を止めてくれた。
ただし、止めてはくれたけれども、まだ僕の両乳首は先輩の指につままれたままだ。
「な、高橋」
先輩が、僕を見上げて名前を呼ぶ。
その声はさっきまでのちょっとふざけてはしゃいでいる感じではなく、いつもベッドで僕に囁いてくれる、あの男っぽい色気のある声だ。
「イタズラしたい?
それとも、イタズラされたいか?」
ハロウィンの決まり文句とは少し違う、先輩の問いかけに、僕は息を飲む。
考える間もなく、僕は自分の欲望を口にする。
「イタズラ、されたい、です」
口にした瞬間、その言葉が酷く卑猥に聞こえることに気付き、僕は顔を赤くする。
「よし」
先輩は僕の返事に大きくうなずくと、乳首から手を離して体を起こすと、さっきまでとは反対に僕を組み敷いた。
「エロいサキュバスには、いっぱいイタズラしてやろうな」
そう言うと、先輩はさっきまでの単純に嬉しそうな笑顔とは全く違う、何か悪いことでも企んでいそうな含みのある笑顔になった。
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