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ugly
そのあとで建物に寄ったら、約束の時間に遅刻したからと、滅多打ちにされた。角材や椅子を振り下ろされて、頭を守るのに必死だった。そのあとで羽交い締めにされて、「僕が吐くまで腹パンしてください、吐かせてくれた方に僕から賞金があります」と言わされた。
お金なんか持っていなかった。というよりも財布は、男たちに盗られたままだ。
「うっ」
硬い拳が腹に食い込む。僕は太っていなかったから、拳の圧力が、内臓に直接響いたような気がして、苦しかった。
殴られる都度、声が漏れた。
だけど、吐くことはなかった。
痛いのと苦しいのと、吐きそうなのは、何か違う。
吐かなかったことが気に食わないとして、僕は男たちに15万円払う約束をさせられ、罵声を浴びせられながら帰った。
あの通りは人がすくないけど、それでも人に見られないように端を下を向いて通る。途中で、腕を掴まれた。なんとなく、誰かは予想できた。クラスメートの彼だ。
「お前、行ったのか」
「うん」
「俺のせいで待ち合わせの時間に遅れたとかで、ひどいことされたのか」
「別に」
「でも、殴られたんだよな?」
「うん」
彼は僕の手当てをするからうちに来いと言ってきた。手当てなんかしなくても治るからと断ったけど、彼は僕に有無を言わせなかった。
他人の家に上がったことなんか、親戚の通夜くらいでしか、経験がない。
友達の家に遊びに行ったことはなかった。親は幼かった僕に一度だけ、よそ様の家には上がるなと教えたことがある。
僕が彼の家に上がろうとしないでいると、彼は少し呆れたように「そんなところじゃ何もできないだろ」と僕に靴を脱ぐように言った。
さらに洗面台で顔を洗わせて、そのあと、消毒をして、切れたところには絆創膏を貼った。
氷をビニール袋に入れたもので、殴られて腫れていた頬を冷すことも教えた。
飲み物やお菓子も出されたけど、僕は手をつけなかった。
「さっきは、偉そうなこと言ってごめん。でも俺、お前を助けたい。教室にいる時もさ、都合のいい雑用係みたいにさせられてるのとか、男子に殴られてるのとか、今回のこととか、お前を助けだしたい」
彼はなぜか、泣きそうにしていた。
「俺、お前が笑ってるところ、見たことないんだよな」
笑うことがないんだから仕方がないだろう。彼がなんでこんなことを言うのか、僕にはわからない。
「お前は嫌だって言うかもしれないけど、これからは俺といよう、あの建物にも行かなくていいから。俺が守る」
僕は頷いたり返事をしたりしなかったけど、いかにもそう決まってしまったような空気になった。
次の日から、彼は僕の家に、毎朝迎えに来るようになった。
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