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ugly

彼が上着を貸してくれた。 でもその上着も、僕のせいで汚れてしまった。男たちのきたない液体で、濡らしてしまったのだ。 要求されていた15万円が返せなかった。僕の部屋にあったありったけのお金を集めても半分以上足りなかった。 男たちは、僕に値段をつけた。 1回3千円だと言った。そうは言っても、僕には一銭も入らない。3千円分返したことにしてやる、という意味である。 殴られながらはめられて、夜のあの公園に引きずり出されて、喉に男たちの精液を流し込まれた。男の性器と僕の唇の間を液が糸挽いているのが見えて、一気に胃がこみ上げて、僕は吐いた。夕ご飯なんか食べる間も無く呼びつけられた僕の胃の中は空っぽで、吐き出されたものは全部、男たちの精液であった。砂に広がる吐瀉物を再び飲むように言われて、僕は地に口をつけて啜る。頭の上から、さらに液を掛けられる。髪を掴まれてまた喉を弄ばれて、何回も何回もそれをした。そのうちに過呼吸を起こし、僕は公園に捨てられて、彼が助けにきた。 僕を抱きしめて僕にたくさん触れた彼が、自分せいで汚れたことが、申し訳なくて仕方がなかった。 本当のことを言いたかったけど、言えなかった。嫌われるんじゃないかと、戸惑ってしまって、黙るしかなかったのだ。 上着は風呂場で綺麗にしようとした。僕の体が汚れるのと、彼が汚れるのだったら、僕の体のことなんかどうでもよく思える。 洗面器いっぱいに泡が立っても、ぬるぬるが取れていない気がする。それでも洗濯機には入れなかった。僕の手で綺麗にしなければならないと思う。 洗濯洗剤だけじゃなくて、石鹸とか、消毒も使った。水も、熱湯に変えてみたりもした。 日付が変わるまで、彼の上着を洗い続けた。 手が動かなくなった。 熱湯を使ったからか、皮膚がふやけてぼろぼろになっている。 僕は上着を、自分の部屋の窓の出っ張りに引っ掛けて干した。 食欲も湧かなくて、僕は体を洗った後、眠った。 翌日は学校を休んだ。 彼は僕の家に来なかった。 頭が痛くて、喉も痛かった。声も枯れていた。 昨日洗った彼の上着を見て、僕は愕然とする。 強くこすりすぎて、所々ほつれていて、洗剤が悪かったのか、色が落ちていた。返せるようなものにはなっていない。 全く同じで新しいものを買おうと、それで許してもらおうと僕は思い始めた。 でも、もうお金がなかった。 父親に頼もうにも、家にいない。 だから、僕は姉に電話した。 上着を一着買えるようなお金が借りたいと、頼んだ。駅まで来てくれたら渡せると返事が来たから、僕は家を出る。体調不良なんて、気にしていられない。 ぼろぼろになった彼の上着を手に持った。 どこで買ったのかわからなかったけど、お店の人に聞けばいいと思った。 姉は僕の様子を見て心配したけど、僕は平気だと言い張って、とりあえず、大きなショッピングモールへ行った。 そこへ来たのは、はじめてだった。 僕は服が置いてある階へ行って、店にいた女性に、これと同じものが欲しいと頼んだ。店員は僕の傷だらけの顔を見てすこし驚いたようだったけど、すぐに案内してくれた。 9千円した。 高いのか安いのか、よくわからなかったけど、だけど見つけられてよかったという安堵が大きかった。 明日、もしも彼が来てくれたら、その時返そうと思う。汚れた方は、捨てるのも申し訳ない気がして、部屋にずっと、置いておくことにした。 喉も頭も痛かったけど、心はすこし、楽だった。 出たお釣りで、彼が前に僕に貼ってくれた、治りが早くなる絆創膏を一箱買った。

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