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ラブストーリーは何とかかんとか1

さて、拳による暴力的解決ではなく平和的解決を望む紗月くんの意向に従い、私たちは知り合いの医者に兄貴を診せることにした。 4人で私の愛車のA1に乗り、向かうは横浜だった。後部座席で兄貴が紗月くんのスマートフォンで子供向けアニメを見て、ぎゃっぎゃとはしゃいでいたが、やがてまた大きないびきをかいて眠り始めた。 紗月くんも昨夜から兄貴の相手をし、ろくに眠っていなかったのだろう。喧しい音を間近にしながらも、すやすやと寝息をたてていた。 「……頭が痛いわ」 私はハンドルを握りながら、ため息混じりに独りごちる。「何で、こんなことに巻き込まれちゃったんだろ」 「それもまた、運命ってやつだよぉ」 助手席の美和はスマートフォンを弄りながら、鼻歌を歌うようにそう言った。能天気で楽しそうで、ベリーソーキュート……。開いた窓からさらさらと吹いてくる風が、美和の髪をふわふわと揺らしているのが、たまらなくビューティフル。 「まぁ、いいわ。これで兄貴が元に戻った時には、願い事を聞いてもらうから」 「情報提供してもらうの?」 「そんなところ」 私は答え、ウィンカーを出して右折する。兄貴は裏社会に通じているため、その筋の情報に詳しい。隣国の上客が大金を積んででも得たい内容を、等価交換なしで手にできれば、こちらとしてはラッキーだ。これだけ面倒と精神的ショックと世話をかけさせているのだから、それくらいはしてもらわないと。 「和仁くん、偉くなったよねぇ」 美和は後部座席を見て、しみじみと言う。 「私が初めて会った時……まぁ私はクスリで何が何だか分からない状態だったけど、その頃はまだどこにでもいるチンピラって感じだったのにね。今では社長さんだもん」 あぁ、と声を漏らし、私は小さく笑った。 「まぁ、あの頃から出世欲はあったみたいだけど、やっぱり沙月くんとの出逢いがターニングポイントにはなったんだろうね」 「そう言えば私、沙月くんと和仁くんの馴れ初めのこと、あまり知らないなぁ」 「そうだったっけ?」 信号が赤になり、前の車に倣ってゆっくりとブレーキを踏み、停車する。そして今流行りの電子タバコを咥えながら、何年も前に沙月くんから聞いた話を、ぼんやりと思い返した。

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