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第1話

「trick or treat」 魔女の格好した小さい女の子が手を出してる。 『お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ』って意味。 明日はハロウィンで外部からも人が来るからお菓子を準備してるけど、今日は前日で何もない。 「お菓子ちょうだい。」 「ごめんね。今、お菓子持ってないんだ。」 この子は一体どこから来たんだ? 保護者はどこにいる? 「お菓子……」 「お父さんとお母さんは?」 「…………意地悪。」 「え?」 「もういい。イタズラしちゃうから!」 すぐにお菓子をあげなかったからか、女の子は怒って行ってしまった。 ………………行っちゃった。 意地悪したわけじゃないんだけど………… 「あ!渋谷じゃん。 何、猫耳付けてんのー?趣味?」 ニヤニヤ笑って寄って来るのは、同じクラスの風間(かざま)。 明る過ぎる茶色の髪。ズラッと耳に並ぶピアス。見る度に違う女連れてる軽い奴。 「バカ!違うよ。明日の学祭の衣装!」 「へぇ……結構似合ってんな。 可愛いぞ。渋谷。」 「嬉しくねぇ!」 恥ずかしくて猫耳を外す。 「なぁ、考えてくれた?」 「何を。」 「俺とデートして。」 「するか!」 肩を組まれ、手を払う。 風間はしょっちゅう俺をからかってくる。 少し俺の背が低くて細くて童顔だからって、いつもいつも、ちょっかい出してきて本当に腹が立つ。 大体、猫耳なんか阿呆な格好してるから馬鹿にされるんだ。全員とか意味分からん!  

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