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第3話
(渋谷、今日も可愛い。)
俺まだ寝てる?夢の中?
許容量を超え、グルグル考えながら洗面台へ。
「渋谷。邪魔。」
(寝ぐせ直してたのか?後ろからギュッとしてみたい。)
「ブッ……ごほごほっ……」
咳き込んでしまった。
朝から暴言を吐く同室の男の、耳から聞こえる言葉は昨日までと同じ。
…………『ギュッ』?
「テメーが鏡見たって何も変わんないんだよ。サッサと洗面台譲れ。」
他の奴にはそんな事ないのに俺だけ当たりが冷たくて口調が厳しい。もしかして嫌われてるかもって、ずっと思ってた。
(何もしなくても可愛いのに。
あ……ボタン外れてるぞ。誰かに見られたらどうするんだ。)
ダラダラと冷や汗が流れる。
この頭に響く上條の声はなんなんだ。
聞こえてくるこの声は……
慌ててボタンを直す。
(いけね。見過ぎたか?でも、ボタンはちゃんととめないと。
渋谷は今日の学祭、誰と一緒に回るんだろう……)
「……かっ……上條。」
「なんだよ。」
(渋谷の上目遣い……
そんなにジッと見るなよ。キスしたくなる。
キ……!!
「俺、今日準備があるから、もう行く!」
慌てて部屋を飛び出した。
何……今の……?
上條は俺の事が好きなのか?
…………いや。違うだろ!
なんで心の声が聞こえるの!?
俺は困惑していた。
今日は学祭でハロウィンパーティー。
思えば、心当たりらしいものはあった……ような気がする。昨日、会った魔女の格好した女の子は本物の魔女で俺はイタズラされちゃった…………?
阿呆かよ!馬鹿野郎!!なんだ。そのファンタジーな設定は!!
理解出来ない。自分の頬をギュッとつねる。
「痛……」
……でも、夢じゃない。現実だ。
心の声が聞こえる…………!
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