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第10話

ガラッ!! その時、人が入ってきた。 (渋谷?いない……) 聞こえてきた心の声で犯人が分かる。 …………風間だ! (この部屋じゃないのか?奥の準備室とか?) すぐ横を通りすぎて行く。 風間の心の声に怯えつつ、息を潜める。 聞こえるのは早すぎる上條の心臓の音。 次から次に聞こえる上條の心の声。 (渋谷を抱きしめてる。信じらんねぇ。 温かい…………肩細いな。 ヤバイ……すげー良い匂い。 誰か入ってきた。風間か?これ、見つかったらアウト? 下手に動けねぇし、抱きしめたまま。 こんな風に抱きしめたの、初めて…… アクシデントでも嬉しい。 …………好きだ。 渋谷が好き………… 渋谷は知らないだろうな。俺の気持ちなんて。 むしろ嫌われてるかも…… 俺、いつも酷い事ばっか言ってるし。 でも、照れると…… いつもごめん。渋谷。お前が好きなだけなんだ。) も、やめて…… 本当に無理………… (チッ。ここじゃなかったのか。) ガラガラ……ピシャ! 風間が出てった。 「いつまで、くっついてんだよ。 いい加減、離れろ。」 (どうしよう…… …………息が苦しい。 本当はもっと抱きしめてたかった。 俺、今、顔赤いかも…… 見られたら、言い訳できねぇ。 歯止めが効かなくなる前に離れて……) 何も言えなくて、無言のまま、教卓を出た。 (渋谷?どうしたんだろう?様子が変だ。 言い方、キツすぎたか…… さっき、嫌な言い方をしたから?傷付けた?) 「渋谷。」 肩を捕まれて振り向いた。 目が合った瞬間。 上條の頬がカァッと赤くなる。 (…………うわ。お前、なんて顔してんだよ! そんな可愛い顔……無理……!)

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