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第3話
週末、セールのせいで土日とも出勤になった。
月火が休みでも何も嬉しくない。
明さんに会えないじゃないか。
少しでも会いたくて、泊めてもらうことになっていたが、それも叶わないらしい。
『ごめん。急に打ち上げ入って、行けなくなった。』
『わかった。呑みすぎないでね?』
『明に会いたいよ。』
『僕もだよ。来週なんてすぐ来るよ。』
『うん。』
スマホから目を上げると、ロッカーの扉を閉めた。
「四宮!店長が早くしろって。」
「あ、はい。すぐ行きます。」
店長を先頭に繁華街を歩く。
行きたくない気持ちで足が重くなる。
行き付けのバルに入ると、端の方に適当に座る。
「ここ、いいですか?」
「ああ。どうぞ。」
隣に大迫隼人(おおさこはやと)が座ってきた。
正直、今の気分で一番話したくない相手。
ビールが配られると店長の話のあとに乾杯になった。
前にあるつまみを食べながら、ビールを一気に呑んだ。
「すみませーん。ビールくださーい。」
「おっ!四宮!呑め呑め。お前の売り上げ凄かったからな!」
遠くから店長に声を掛けられて笑顔で答える。
「ありがとうございます!またがんばりまーす!」
「ご注文は?」
店員がオーダーを聞きに来た。
周りの人にも聞き、自分のと合わせて注文する。
「結構、呑まれるんですね?」
「別に、普通じゃないかな?」
隼人に笑顔で返す。
「今日は彼氏さん来なかったですね。」
「来ないよ。そんな毎週服買う人いないでしょ?」
笑ってみせるが、心の中はイライラしている。
「そうですね。ただ、服を買いに来たっていうよりは、四宮さんに呼び出されて来てたのかと思いまして。」
「何が言いたい?」
お互い料理を見ながら、話をする。
「別に。彼氏さん、大変だなと思って。あの人、クローズでしょ?なのに人前で腰に手を回されて、困ってましたよね。しかも、俺にキスしてるとこまで見られて。」
「君には関係ない。」
「そうですね。…はっきり言っときたいんですが、その、可愛さで何でも許されると思ってる態度、腹が立ちます。自己中心的で、周りの人の気持ちなんて気にもとめてませんよね?」
「そうかもね。はっきり言ってもらえてすっきりしたよ。隼人との距離感、困ってたんだよね。」
「彼氏さんの気持ちもわかってないと思います。あんなこと人前でして、よく恥ずかしくもないですね?他にも我が儘通して困らせてるなら、別れてあげるべきです。先輩に振り回されて可哀想です。」
何杯目かのビールを飲み干して、ジョッキを置く。
「少ししか呑んでないのに、もう酔ってるの?」
くすりと笑い、隼人の頭を撫でる。
隼人の顔が赤くなる。
「やめてください。そういうところを言ってるんです!」
手を払いのけられた。
「でも、嬉しかったんじゃない?」
耳元で囁く。
「…トイレに行ってきます。」
新しく来たビールを煽る。
呑みが進み、深夜2時頃、やっと解放された。
店長から、それぞれタクシー代をもらうと、店を出た。
自分の家だと一駅だから、これで足りる。
でも、明の家に行くにはあと5千円はかかる。
今はもう寝てるだろうし、明は明日仕事。
でも、お酒の勢いもあって、会いたい気持ちが競り上がってくる。
「四宮さん。」
「何?」
隼人がついてきた。
「今日は失礼なこと言ってすみませんでした。」
「お酒の席だから、いいんじゃない?気にしないで。」
「…四宮さんはどうしてあの彼と付き合ってるんですか?」
「どうして?愛し合ってるからに決まってるでしょ?…お疲れ。」
タクシーを止めると隼人を置いて、ドアを閉めた。
「お客さん、どこまでにします?」
明のうちに向かってタクシーを走らせた。
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静かに鍵を開けて、忍び足で入る。
鞄とコートをソファにかけると、とりあえず水を呑んだ。
すると、寝室のドアが開いて、明が出てきた。
「いらっしゃい。」
明の笑顔がうっすらと暗い部屋で見える。
「ごめんね。来ちゃった。」
「嬉しいよ。」
明はゆっくりと近づくと僕を抱き締めた。
僕も抱き締めて、思いきり明の匂いを吸い込む。
肩に頭を預けると明が撫でてくる。
「お疲れ様。シャワー浴びてくる?」
「うん。」
眠たそうな明を見てると、隼人に言われた言葉が頭をよぎる。
「明は寝てていいからね?」
「うん。ありがとう。」
明はおでこにキスをすると、僕をお風呂場に連れていって、シャワーを出して浴室を温めてくれた。
「おやすみ。」
「おやすみ。」
扉が閉まると、シャワーを浴びた。
アルコールのせいか頭がぼぉっとする。
明は明日仕事なのに、僕ってやっぱり自己中なのかな。
こんな夜中に起こされて、迷惑だよね。
だから、一緒に住みたくないのかな。
マイナスな考えが頭の中でぐるぐるとまわる。
「ああっ!もおっ!」
ただ好きなだけなのに、こんなに苦しいなんて。
だから、アイツとは関わりたくなかったんだ。
ペースを乱されてる。
明に対する態度に何の迷いもなかった。
明も僕を好きだし、それ以上に明を愛してる。
嫌がることもあるけど、お互いに愛し合えているから、何の問題もないと思ってた。
違うの?
そのうち僕の事も嫌になる?
僕のせいで色々我慢してる?
本当はゲイの僕と付き合うの恥ずかしいのかな…。
シャワーを終えると、着ていた服を来て、部屋を出た。
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