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第5話

「明さん、そろそろ起きないと朝御飯食べる時間無くなっちゃうよ?」 体を揺らす腕を引っ張られて明の上に乗ってしまった。 キスをされてドキドキする。 「今日、行かない。」 「え?」 「休むって電話してくる。」 そういうと、洗面所に入っていった。 僕はあたふたしながら、戻ってくるのを待つ。 程なくして明が戻ってくると裾を掴んだ。 「具合悪いの?ごめんね。僕が我が儘言ったから。」 またキスをされて気持ちよくなってしまう。 「元気だよ♪むしろいつもの平日より元気。元気がないのは舜でしょ?だから、今日は舜をたっぷり愛してあげる。」 「え?」 昨日からずっと明に驚かされている。 僕が翻弄してるんだと思ってた。 でも、違った。 明の方がずっと大人で、僕はその腕の中に居るんだ。 とても暖かな腕の中に。 「舜。おいで。」 膝の上をポンポンと叩いて待っている。 ゆっくり座ると後ろから抱きしめられた。 「舜。何が不安?」 「…わからない。でも、明さんに嫌われたくない。」 「どうして嫌いになると思うの?」 明の腕をきつく握る。 「僕は我が儘で、いつも明が嫌がることばっかりしちゃう。自己中だから。きっと明さん、嫌になる日が来ると思う。…でも、そんなの嫌で、どうにか好きで居続けてもらえるようになりたい!けど、全然わからなくて…っ。」 涙がこぼれる。 声が震えてうまく言えない。 「舜の我が儘は、僕を大好きだから、我が儘になっちゃうんでしょ?自己中心っていうより、どちらかっていうと僕、明中心じゃない?大好きだから、意地悪な我が儘言いたくなっちゃうんじゃない?大好きだから、何処でもキスしたくなっちゃうし、えっちを我慢できなくなっちゃうんじゃない?僕はずっとそう思ってるよ。舜の我が儘も自己中も、『明の事大好きだよ。』っていう自己表現だと思ってるよ?違うかな?自惚れてる?」 明は楽しそうに笑いながら、僕を抱き締め続けてくれる。 「明の事大好き。」 「そうだよね?…それに舜は一般的な人がいう自己中なんかじゃないと思うな。だって、今までだって、恋愛を言い訳にして、僕を無理矢理休ませたり、自分勝手に仕事に遅れてみたり、そんな事はしないでしょ?きちんと自分を律して生活しているし、仕事で迷惑をかけたり、人様が嫌がるような事はしない。この間の飲み会だって、一緒に働くみんなの事を思って行きたくなくてもちゃんと行って、嫌な顔せずに過ごしてきたんじゃない?」 「…うん。」 声がどうしても震える。 明の方を向き直して抱きつく。 「舜。…どうして僕が舜を嫌いになるの?こんなにかわいい恋人が出来て、今でも夢なんじゃないかって思うぐらいなんだよ。僕にはもったいない人だと思ってる。むしろ、僕の方がつまらない人間で捨てられてもおかしくないなって思ってる。」 「絶対捨てたりしない!そんなの絶対ない!」 「わかってるよ♪僕もそうだよ。舜と別れるなんて考えたこともない。逆に監禁して閉じ込めておきたいとは思ったことあるけど。」 「ほんと?」 「ほんとだよ。どこの誰が舜にちょっかい出してくるか気が気じゃないよ。こんなにかわいいんだもん。誰にも触らせたくないし、他の人に笑いかけないで欲しいぐらい。…そんなこと言ったら、舜は働けなくなっちゃうけどね。だから…。」 「だから?」 「同棲するのが怖いんだ。」 「どういうこと?」 「今日だって、ちゃんと仕事に行かないといけないってわかってる。でも、舜の事になると、自分の理性がきちんとはたらかない。僕は同棲すると、舜と離れるのが嫌になって、そのうち生活が破綻しちゃうんじゃないかって思ってる。休みの日に会うだけだと、気にしないでいいことも、毎日会うと気になって仕方なくなると思うんだ。…例えば、舜が仕事で落ち込んで帰ってきたりしたら、心配で眠れなくなったり、夜も毎日、求めちゃうかもしれない。」 「僕はそれでも毎日、明さんの側にいたいよ。毎日、舜を抱き締めて。大好きだよ、って毎日言って。」 「そうだね。こんなに舜が不安になるなら、側にいてあげないとね。」 「お願い。一緒にいて。会えない日なんて嫌だよぉ。」 「うん。一緒に住もう。」 唇を重ねて舌を絡める。 明さんの全てを絡めとりたい。 僕だけの明さん。 僕たちは再び愛し合った。

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