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第7話
鼻唄を歌いながら、乱れた商品を整える。
天気が悪く客足が伸びない。
でも、客がいないと明の事を考える時間がたっぷりある。
「機嫌、いいですね。」
隼人が隣にきて、同じ棚を整理し始めた。
「まあね。…このTシャツ減ってるから、後で補充しといてくれる?」
「わかりました。…あれ、わざと俺に見せたんですよね?在庫管理してんの俺だけだし。あの部屋に来るのは俺だけなんで。」
「たまたま見られただけだよ。見せたがるわけないでしょ?」
「そうですか。…ちょっと在庫で見つけられないのあったんで一緒に来てもらえませんか?」
「わかった。今ならお客いないし、すぐ行こう。」
先を歩いて在庫倉庫に入る。
さっき足りなかったTシャツを手に取る。
「で?何が見当たらないの?」
動画を流しているような音がして振り替える。
「四宮さん、これ、店長に見せたらどう思うでしょうね?」
隼人の掲げたスマホには先日のキスシーンが写っていた。
「悪趣味なことするね。見せたら減給かな。仕事中だし、部外者連れ込んでるし。」
「彼氏さん、連れて来いって言われるかもしれませんね。」
「そんなこと言うわけないでしょ。」
「俺が、この人が無理矢理四宮さんを脅してたって言えば、事情が変わると思いません?」
「何がしたいわけ?」
「先輩、俺にもやらせて下さいよ。」
隼人は目の前まで歩いてきて不適に笑う。
閉口して隼人の目を真っ直ぐ見る。
「やらせてくれたら、この動画消します。俺、約束は守るタイプです。」
隼人の手が頬を撫でる。
その動きの不快感で、眉間にしわがよる。
「彼氏さん、他の人にばらされたくないと思いますよ?ただ1度だけやらせてくれたら、本とに消します。」
「わかった風な口をきかないで欲しいな。…わかった。土曜の仕事が終わった後に特別に時間をつくってあげるよ。じゃあ、これで。」
部屋を出ると、苦虫を噛んだような顔になる。
顔をあげるとなに食わぬ顔でフロアへ出た。
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