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第3話
「あのさ、笠松」
俺が声をかけようとしたところでぼそっと笠松が口を開いた。
「……俺、うざい?」
「え?」
「俺、なんか間違ったかなーって」
「間違ったって何が?」
すると珍しく気落ちした笠松が視線を伏せながら続けた。
「お前、今までさ、夜は……誰かといたんだろ?」
「あー、眠れなかった時か」
「うん」
「でも、今は笠松といるだろ?」
すると笠松はちらっと俺のことを見ると、また俯いてボソボソと話す。
「……言ってたじゃん。普通に寝るだけじゃないって。でも、俺には何もしないしさ……い、一応、つ、付き合ってるのに」
そして拗ねたみたいに軽く口を尖らせると、顔を背けた。でも、恥ずかしいのか髪の毛の隙間から覗く耳まで赤くなっているように見える。
「え? ……もしかして、それで機嫌が悪かったのか?」
「機嫌悪いってなんだよ! 俺は俺なりに一生懸命で……」
思わず大きなため息をついてしまう。そして頭を掻きながら笠松の肩を掴みこっちを向かせた。
「何もしないのが不安にさせたのか?」
「不安っていうか、なんで俺にはしないのかなって。……魅力ないんだなって」
「お前ばかか」
「ばかってなんだ!?」
「だってそうだろ。痛そうで怖いって言ったのはお前だろ?」
「それは想像の範疇を超えてたから」
「よく考えろ。お前がしてるのってその範疇を超えることなんだぞ?」
言ってることと、やってることがちぐはぐだと呆れながら笠松を見ると、しょんぼりした顔をして力なく座っていた。
そっと笠松の髪に触れる。すると途端に体をびくっと震わせた。こんな些細なことでも強張らせるくせに、まさか何もしないって悩んでるなんて思うはずないだろう。
そばに寄ると、唇に軽いキスを落とす。
笠松は驚いたのか目を丸くしたままだけど、そのままゆっくりとソファに押し倒して見下ろした。
「怖い?」
「こわく、ない」
「本当?」
笠松が頷いたのと同時に、もう一度キスを落とした。今度は角度を変えながら唇を舐めその隙間に舌を差し込む。
やっぱり震えているその舌を捉え口腔内を舐め回すと次第にその力が抜けていく。
「……ぅ……ッ…」
笠松の甘い声が漏れたあたりで、舌を引き抜けば唾液が糸を引き、自分の唇を舐めると笠松は赤い顔のまま俺のことを見ていた。
「笠松がいいって言うならこの続きだってするよ」
「え?」
「我慢しなくていいなら我慢しない」
「我慢してるの?」
人の気も知らないでそんなことを言うからぎゅっと抱きしめた。
「嫌ならはっきり言って。いいならそのまま笠松も俺のこと抱きしめて」
するとおずおずと笠松が俺の背中に腕をまわすから、そのまま抱き起こして抱え立ち上がった。
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