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第4話

 抱えあげて歩き始めれば、笠松は焦って声を上げていたけど気にすることなくそのまま寝室に向かい、ベッドに組み敷いた。 「うわっ、えぇ!」  ベッドの上で見下ろすと更に笠松は赤い顔をしていて、手を出してしまえばきっともう止まれないと思った。  服の裾から手を差し入れ、その肌に触れる。脇腹から胸へ指を這わせると笠松はびくびく体を小刻みに震わせた。ただ触れてるだけなのに、笠松の肌だと思うだけで体が熱くなる。 「……っ、んッ」  そして不意に胸の突起を摘んだら甘い声が漏れ、自分の声に驚いたのか笠松は自分の手で口を押さえた。 「声、聞きたい」  押さえてる手を掴むと笠松は大きくかぶりを振る。 「変だから、やだ」 「変じゃない。可愛いからもっと聞きたい」 「やだ! 俺ばっかり余裕ないみたいでやだ!」  すると笠松は眉をひそめながら睨むように強い視線を向けていた。 「俺だって余裕ないよ」 「嘘だ。三芳は涼しい顔してるし、いつもと同じだもん!」  そんなことを言うので笠松の手を取り、自分の胸に押し当てる。 「俺がドキドキしてるの伝わる? これでも余裕あるように見える?」  ドクンドクンと大きく打つ鼓動が笠松の手を押し当てたことで自分にも響いて更に大きな音に聞こえた。そして笠松にもそれは伝わったようで、目を丸くしたままこっちを呆然とみている。 「ドキドキしてるのわかる?」  笠松は頷いておずおずと目線だけをこちらに向けた。 「お前もドキドキしたりするんだな」 「当たり前だろ? ずっと好きだった子と初めてできるのにドキドキしない男なんていると思う?」  するとさらに顔を赤らめてこっちを向いた。  抱きしめると同時に耳朶を唇でそっと撫でる。そしてそのまま囁くように言った。 「続き、してもいい?」  すると笠松はこくっと頷いたと同時に、心配そうな表情で顔を上げた。 「俺、何したらいい?」 「何もしなくていいよ」 「でも、それってマグロって言うんだろ? それくらい俺だってわかるんだからな」 「笠松をマグロなんて思わないよ」  そう言ってるのに気に入らないのか、笠松は眉間にしわを寄せるだけだ。 「俺、本当に初めてなんだ。だから、がっかりされたら嫌だ」 「前にも言ったよね。がっかりなんてしないよ」 「でも、実際にマグロだったらがっかりするかもしんないじゃんか!」  俺が何を言っても笠松はああだこうだと言ってくる。 「そのために色々勉強してたのに……どうしよう」  笠松は色々考えて混乱すればするほどよく喋る。だから言葉を遮るようにキスをした。  開いた唇の隙間から舌を舐めると軽く吸って唇を離す。笠松を黙らせる奥の手だ。 「もう黙って。全部俺に任せて」  そう言いながら笠松の髪を撫でた。 「これからやること気持ちよかったら素直にそう教えて。嫌だったら本気で殴ってやめさせて」 「な、殴ってやめさせるの?」 「うん。そうでもしてもらわないと、俺たぶん止まんないから……」  そう耳元で言ったのと同時に耳朶を甘噛みした。自分の体温が上がっていくのがわかった。  そして、そっと笠松の肌に触れれば鼓動もまた早くなっていった。

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