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最終話
暫く抱き合って、ゆっくりと中からものを抜くとその刺激でさえも敏感になった笠松は声を漏らしながら俺の腕をぎゅっと掴んだ。
息はまだ上がったままだったが俺が抱き寄せキスするとそれに一生懸命応えてくれて、そのたどたどしさがやっぱり可愛いと思う。
しかし、かなり体力を消耗したのか意識は朦朧としているようにも思えた。やっぱり初めての相手に少しやりすぎてしまったかと反省しながら笠松の髪を撫でる。
「無理させてごめんな」
「ん? 三芳だからいいよ」
「痛くないか?」
「うーん、まだなんか挟まってそうな感じ。でも、思ったより平気」
そう言って笑った笠松だったけど、力は次第に抜けていき閉じそうになる瞼を必死であけているように見えた。
「疲れただろ? 眠るか?」
「やだ、まだ起きてたい」
「寝ていいって」
するとかぶりを振りながら俺の腕をぎゅっと握る。でもその目はやっぱり眠そうで抱きしめながら頭を撫でてやると目をこすっていた。
「側にいてやるから寝ろ」
そう言うと安心したのか瞳を閉じていき、すぐにすぅすぅと寝息が聞こえてきたので、そっと額にキスをして髪を撫でて整える。
一年半前には、この恋が実るなんて思いもしなかった。
あの抜けるような青空と軽やかに舞う花びらの中にいた笠松は輝いていて、俺のような荒んだ人間とはまるで違う人生だろうと思ったからだ。
諦めてはいたけど知りたい欲というものは膨らむばかりで、同じクラスになった時は嬉しかったし、クラスメイトと話す会話に耳を傾けて、好きな芸能人も、趣味だという音楽も、好きだという本も、色々知ったけど俺とはまるで合わなくて落ち込んだりもしたっけ。
それでも、笠松が好きだというものを集めていると荒んだ気持ちをも穏やかになっていくような気がしたから不思議だった。
その笠松が今は自分の腕の中にいる。
「人生ってわかんないもんだな」
眠る笠松を見つめ、時折髪を撫でながら、この寝顔ならいつまでも見ていられる気がした。
いつも、こいつは突然俺の前に現れて、俺の想像とか常識とかを軽く飛び越えてくる。
それは突拍子もないことばかりだから、この先もこの天然人たらしの笠松と一緒にいる限り俺はきっと翻弄されながら過ごしていくに違いない。
困ることも多いけど、次は何を言ってくるのかと考えることは少し楽しみにもなっていて。
それだけ俺はこいつにハマっているのだ。
人となりを知れば知るほどに、その温かさに触れれば触れるほどに、それは想像していた以上に胸を高鳴らせるものだったから。
暫くして蒸しタオルを作って来て笠松の体を拭いた後、抱きしめるようにして眠りについた。
少し前まで、眠れなかったなんて嘘みたいに、深いふかい眠りへといざなってくれる笠松の体温は、心地いい。
出来ることならば、この時間が少しでも長く続きますように。
柄にもなく祈ってみたりして。そんな自分に笑ってしまう。そんな自分は少し格好悪い気がしたけど。
でも、格好がつかなくても大目に見て欲しい。
多分、これが初恋ってやつだから。
END
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