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第6話
あの日、君に会えなかった僕は君を探し続けた。
部屋は引き払われ事務所は辞めSNSは全て消されていて消息が分からない。もちろん電話も繋がらない。
何が起こっているのかわからないまま、日は過ぎていく。
一緒に出かけた場所を何度も探し続ける日々に疲れて、何をしているのか何のために生きているのか分からなくなった。
季節が変わったことなんてどうでもいいし、本当は仕事だってどうでもいい。
僕は止まることが出来ないんだ。空っぽのまま生きているのなら、探してみつからないのなら、空っぽのまま探し続けて死んで行けばいい。
ある日、ウェブで引っかかる言葉があった。
『ひかりを当ててくれてありがとう』
なぜ気になったのかはわからないけど、そのブログを読み始めた。
ひかりを当ててくれてありがとう
いつも見てくれていてありがとう
唄わなくなっても見ていてくれる?
空っぽのオレはつまらないよな
何かオレの出来ることが見つかるまで
代わりに何かで満たしていてくれ
いつでも会いたい
満たしてほしい
簡単なことなのかもしれないけど
また会いに行ってもいいのかな
これは歌詞なのか。もしかしてこれは君じゃないのか?
僕はコメントをつけた。
「僕はもう空っぽ。声に満たされたい」
もし違ってもまた探すだけだ。
数時間後、返事が書き込まれた。
「誰も満たしてくれるひとはいない?」
彼だ。僕は口癖のように「君の声に満たされたい」と言っていたのを覚えていてくれたのか。
「代わりになる人はどこにもいない」
「もう唄えないんだ」
唄えない……どうしたんだ、何があった?
僕はもう我慢できない、君がいることがわかったのだから。
「あのバーで待つよ」
それだけ返事をするとその後の反応はなくなった。
でも、もうこれしかないんだ、待つしかない。
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