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第11話

ごしゅじんさまのてがぼくのてをにぎった。 あたたかくて、びっくり。 もっとつめたいとおもっていたから。 ごしゅじんさまに、ぼくもふれたくて ほっぺやてやあたま、たくさんさわった。 まだしたいことがあるんだった。 「ごしゅじんさま」 「…テンツァー」 「ごしゅじんさま、いままでありがとうございます。ぼくをここへつれてきてくれて、だいじにそだててくれて、ありがとうございます」 何言ってんだこの金魚は。 ボスから厄介モノを押し付けられて嫌々持ち帰り、生かさず殺さずの世話をしただけだろうが。 ありがとうだって? ーーそんな言葉かけられたの、初めてじゃねえか? 「こんな、おどることしかできない、みずのなかでしかいきられない、よわいぼくが、ここまでいきられたのは、ごしゅじんさまのおかげです」 「待て待て。仲間が次々おっ死んでく異常な状況の中、お前は生き残ったんだろ。それに踊りは…俺の癒しだったよ、テンツァー。礼を言うのは、こっち、だ」 …ああ、そろそろもうダメだな。

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