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第5話
幸雄も、千花も、亮も、三人共、魅力的で歩に対して優しくて頼り甲斐があって、他の何よりも歩を優先して考えてくれる。それは親友だからで、歩が三人よりも頼りないから助けてくれているのだとばかり思い込んでいた。
そこに下心があったなんて知る由もない。
「どうしたらいいの……」
店を出て無我夢中で走って来たから今どこに自分が居るのか分からない。人並みに飲まれて進めば何処か知っている場所に辿り着けるだろうけれど、こんな時はいつも三人が後を追ってきて帰り道を教えてくれた。
誰も選ばなければまた四人で仲良く出来るかもしれないと考えて、直ぐにその考えは消えた。
誰も追って来ないのは三人の決意が硬いからだ。誰も選ばない選択をしたらどうなるかを教える為だ。
誰にも頼れない。自分が今までどれだけ三人に甘やかされて守られてきたか今頃になって気付く。こんな大人になってから気が付いたって、長年の蓄積された甘やかしは簡単に抜けてはくれない。
誰かを選んでも他の二人からのそれはなくなってしまう。
「寂しい……」
ずっと甘やかされて生きる事は出来ないと知っていた筈なのに。彼等が結婚して家族中心になれば自分は今までみたいに三人を頼れなくなると分かっていた筈なのに。
そんな日が来なければいいと、心の奥で願っていたのだ。それに気付かされて打ちのめされた。三人の幸せな未来を邪魔していた自分に嫌気がさした。
こんな自分が誰かを選ぶなんて出来やしない。それならせめて自分も真剣に一人一人の気持ちに向き合って、どう思っているか伝えなければ。
たとえ親友に戻れなくても、彼等が今後、自分の事を心配しないように。しっかりと一人で立って前に進める人間に成長しなければ。
その好意に恥じない答えをちゃんと考えよう。三人共、大切な人だから――。
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