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第6話

 ***  秋風が吹く公園のベンチに座って、枯れ落ちた色とりどりの葉の舞を見ていた。  あの告白の日から三日、土曜の午後に歩は千花に呼び出された。  まだ考えが纏まらないまま、待ち合わせの公園に着いて千花が来るのをソワソワしながら待った。  今会っても答えは出ていない。千花が返事を欲しがっているのなら、もう少し待ってもらうしかない。  幸雄と亮からは心配と謝罪のメッセージが来ていた。それには「もう少し考えさせてほしい」と返事をした。  あれからずっと考えている。何を選ぶのが一番良いのか。どれを選んでも誰かが傷付くのはどうしても嫌だ。三人共、大事な親友だ。幸せになってほしいのに自分の選択で不幸になる人間が少なくとも二人はいるのだ。  そして自分もまた、大切な親友をなくしてしまう。小学生からのかけがえのない親友を。 「あーゆーむー」  考え事に夢中になっているうちに千花が来ていて、温かい缶コーヒーを手渡してくれた。苦い味がダメな歩の為に甘めの物をわざわざ選んでくれていた。  手の中で缶コーヒーの温もりを感じて、ぐちゃぐちゃになっていた思考が少し和らいだ気がする。  歩の隣に座った千花は自分用の缶コーヒーを空けて優雅に口元へと缶を運ぶ。  自販機で買える安い缶コーヒーが千花の綺麗な顔と仕草で高級な物へと変わる。長年見続けてきて慣れたはずなのに、毎回その美しさに目を奪われてしまう。 「いきなり公園に呼び出してごめんね」  歩の視線を感じてか、飲んでいた缶コーヒーをベンチに置いて歩に向き直る。 「家に呼ぶか迷ったんだけどさ、二人きりで部屋にいたら歩が警戒するかと思って。オレも落ち着かないしね」  眉根を下げて困ったように笑う千花。  今まで何度も千花の一人暮らしの家には遊びに行ったし、二人きりにもなった事がある。でもそれは千花の気持ちを知らなかった頃の話だ。今、家に誘われても千花の言う通り躊躇してしまっていただろう。  千花に襲われるとか、そういう心配はしていない。実際、家で二人きりになっても千花はそんな事は絶対しないと断言出来る。  ただ、緊張はしてしまうと思う。そのせいで話したい事も上手く話す事が出来ない。千花はそんな歩の性格を熟知した上で、公園という開けた場所を指定したのだ。

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