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第12話

「……元気だったか?」  告白をされた日以来、何となく連絡がしづらくてそのままだった。あれから一週間が過ぎて、その間に千花との事があった。  社会人になってから頻繁には会えなくなったのに、この短期間で個別とは言え二人も歩に会いに来ている。やはり告白は本気だったのだと痛感する。 「うん、元気、だったよ。幸雄は?」  会話がギクシャクする。いつもはもっと自然な会話が出来るのに。 「一応、元気だよ。気が気じゃないけどな」  何の連絡もないままただ返事を待つのは辛い。わざわざ会社帰りに来たのも返事の催促が目的だったのかと、まだ答えの出ていない歩は焦る。 「あ、あのね、その……ちゃんと、考えてるから、だから……」 「ごめん、今のは俺が悪い。焦らせるつもりで言ったんじゃないんだ。歩が悩み過ぎてないか心配で気になってたんだ」 「……幸雄……」  幸雄は四人の中で一番、頭が良くていつも冷静沈着で頼りになる存在だった。  歩の苦手な教科を丁寧に教えてくれて、そのおかげで高校も大学も第一志望に合格出来た。就職活動だって幸雄がアドバイスをくれなければ人見知り気味の歩が内定を早めに貰えるなんて奇跡は起きなかった。  信号が赤に変わってこちらを向いた幸雄。赤いライトに照らされて車内に影が落ちる  あまりにじっと見つめられるものだから視線を逸らす事を忘れて幸雄の顔を見ていた。会話もないまま信号はやがて青になり、視線を外した幸雄がまた車を走らせる。  幸雄との会話は他の二人に比べたら少ない。幸雄自身があまりしゃべらないからだ。  いつも千花と亮が話しているのを黙って聞いている事が多い。そして的確に話しをまとめてしまう。幸雄がこうと決めたらあの二人は黙って頷くしかない。何か反論しようものなら正論で諭されてしまう。 「三人で告白しようって言い出したのは俺なんだ」 「幸雄が?」  意外だった。いつもならそういう意見を片っ端から却下するのに。 「誰も引く気がないって分かってた。俺達はそれぞれ歩に関してだけは譲れなかったから」 「皆、買いかぶりすぎだよ……。僕、そこまで好かれる様な人間じゃないよ……」  幸雄がいなければ勉強も就職も上手くいかなかった。そんなダメな自分が好かれる理由がどうしてもわからない。

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