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第14話

「僕はいつも憧れてた。幸雄みたいに出来たらいいのにっていつも思ってた。幸雄は凄くカッコイイんだよ!!」  思わず力説してから恥ずかしくなった。 「独りでいる事が正しいだなんて思わないでよ……僕はずっと一緒にいたいよ」 「……そうだな」  柔らかい笑顔を見せて、歩の頭をポンポンとする。なんだか子供になったみたいで気恥しい。 「俺の頑なな世界で歩はいつも表情豊かなんだ。笑ったり泣いたり怒ったり、俺が苦手な喜怒哀楽の表現をする歩を見ているとこっちまで自然と顔が緩んでく。顔が緩むと心も緩んで暖かい気持ちになる。俺にとっての歩は太陽みたいな存在なんだ」 「そんな、大袈裟だよ……」  だけど嬉しかった。大抵、難しい顔で何かを考えている幸雄を柔らかくさせる事が出来ているならそれ以上の幸いはない。 「歩」  頭を撫でていた手が頬までするりと降りてくる。  目の前に影が出来て、幸雄の顔が近付いてくるのが分かった。  キスをされると思って反射的に目を閉じる。瞼の裏に一瞬、千花の顔が浮かんでドキリとした。  口唇に降ってくると思ったキスは歩の額へと落とされ、そのまま身体を幸雄の胸へと引き寄せられた。  上等なスーツの肌触りと、ほのかに香る柑橘系の香水。千花とは全く違う、広い胸板。  ふざけあって抱き合ったり、腕や肩を組んだりなんて何度もしたのに、それとは遥かに違う甘い空気が車内に溢れた。  抱き締められた腕の中は頼もしく、安心出来る。安心しながらも、鼓動はうるさいくらいに高鳴って幸雄にまで聴こえているのではないかと思って暑くなる。 「出来るなら俺を選んでほしい。だけど歩が決めた事なら誰を選んでも……選ばなくても、ちゃんと従うから」 「……うん」 「だから、俺が歩を本気で好きだって事は忘れないでほしい。友達に戻れなくても、歩が困ってたら必ず助けに行く。選んだ相手と上手くいかなくて辛い時は話を聞いてやりたい」 「うん……」

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