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第20話

 ***  あれから何回も考えた。答えはいつでもいいと言われたが時間が経てば経つほど自分の気持ちが分からなくなりそうで必死で考えた。  千花も、幸雄も、亮も、それぞれに魅力的で自分には勿体ないと思う。  男同士だという事も問題だ。世間はマイノリティにも寛容になっては来ているが、まだまだ偏見の目で見られる事の方が多い。  女性とならそんな目で見られずに幸せな家庭を築けるかもしれないのに、自分が誰かを選ぶ事で親友の幸せな未来を絶ってしまうのも怖かった。  だからと言って誰も選ばなければ、歩は親友を一度に三人も失う。一人を選べば後の二人は祝福してくれるだろう。そしてこの先も今まで通りの親友としての付き合いが出来るはず。  三人を失うくらいなら誰かを選ぶ方がいいのかもしれない。でも誰を選ぶべきか分からない。  自分の気持ちに素直になって、誰となら恋愛が出来るか想像してみた。  三人それぞれに感じる胸の高鳴りは親友に対する感情ではない。ずっと気が付かなかっただけで、いつの間にか三人からの深い愛情に包まれていた。それはとても心地の良いフワフワのベッドの様だ。  今まで女性と付き合いたいという欲望が薄かったのは、知らず知らずに三人の愛情を受けて満たされていたから。自分が友情だと思っていた感情は深愛だった。  そんな思いを三人分も受けているのだから満たされていて当然だ。他の人に目がいかなかったのも無意識にその心地良さを自分が選んでいたからだ。  三人からの告白というきっかけで気が付いてしまった。  自分が三人をずっと恋愛の対象として見てきた事に。だからキスをされても嫌じゃなかった。むしろすんなりと受け入れて、もっと欲しいと強請りそうになった。  親友という言葉で自分の気持ちを誤魔化してきたのを、三人は気付かせてくれた。  誰か一人を選べない程に、それぞれの事を愛してしまっている。誰か一人が欠けてもダメなのだ。三人共が好きで、誰も手放したくない。  なんて欲深くて優柔不断なのだろう。自分勝手で我儘な気持ちに嫌気がさす。  それでもこれが歩の素直な本当の気持ち。  悩み続けて分かった気持ちを、三人に打ち明けよう。その後どうなるか分からないけれど、嘘だけはつきたくない。結果的に三人共が自分の元からいなくなっても、心から好きだと伝えてくれた三人に誠心誠意、伝える事しか歩には出来なかった。

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