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第21話

「急に呼び出してごめんね」  亮の店の定休日の夜。仕事終わりの幸雄と千花を呼び出し、休みでのんびりしていた亮に無理を言って店を開けてもらった。  答えを出したから伝えたいとそれぞれにメッセージを入れた時は指が震えていた。  仕事を終えた歩が店に着いた時には既に三人共揃っていて、あの告白の日みたいに三人並んで座っていた。唯一違うのはテーブルを移動させてお互いの間に隔てる物がない事だ。  三人はいつもの様に他愛ない会話をしていたようで、歩が店に入ってきた瞬間、会話を止めて真剣な表情になった。  怖ず怖ずと目の前の椅子に座り、三人を前にして息を吸い込んだ。  誰かの家で話すより、店で話した方が緊張しないかと思っていたがそんなことはなかった。  今から話す事を三人はどう思うか考えただけで胃が痛くなる。自分が選ばれると期待しているかもしれない。または選ばれないかもと不安になっているかも。 「それで、ちゃんと答えは出た?」  緊張して声が出ない歩に千花が優しく声を掛けた。 「……出たよ。ちゃんと考えた。聞いてくれる?」  三人は顔を見合わせてから歩を見直して頷いた。全員が緊張していて、酸素がこの店だけ薄くなった様に感じた。 「……僕は、自分でも気が付かないうちに恋をしてたんだ。いつも一緒だったし、会えない時も絶対に離れていかないって思っていたからこの関係がずっと続くんだって安心してた」  だけど違った。いつまでも恋してる事に気が付かなければそのうち皆、結婚をしたりして離れていってしまう。今は好きでいてくれても、報われない思いならば諦めて次に進もうと切り替える可能性は大きい。 「三人が告白してくれたから気付けた。今まで積極的に恋愛をしたいと思わなかったのは好きな人が傍に居たからだったんだってわかった。だから……」  告白をきっかけに友情が壊れてしまうリスクがあったのに、三人共が諦めずに思いを伝えてくれた。これならきっと、誰を選んでも友情は壊れない。 「一人だけを選ぶ事は出来ない。僕には皆それぞれ大切な存在だから」  言葉では伝えきれない。この思いを何と表現したら三人に伝わるだろうか。 「じゃあ……三人とも玉砕か」  亮がそう呟くと、千花と幸雄も小さく溜め息を吐いた。 「そうじゃなくて!」  慌てて立ち上がると勢い余って椅子がバタンとやけに大きな音を出して倒れた。

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