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第22話
「そうじゃないんだ! これは! これは僕のワガママで、優柔不断な性格のせいだし、皆が呆れても仕方ないんだけどっ……」
この決断を口にするのは勇気が必要だった。こんな事、三人が認めるとは思えない。最低だと言われて、三人共、去っていってしまうかも。
それでも歩にはその選択肢しかなかった。一人を選ぶ事も、三人共を振ることも出来なかった。
「……三人が好きなんだ。一人一人が大好きで、それぞれに恋愛感情を持ってるんだ……。だから、三人共と付き合いたい。幸雄も千花も亮も、僕には一人だけを選べないから、欲張りだって分かってるけど、三人共を選びたいんだ」
言っていて自己嫌悪に陥る。こんなワガママな話、許されるわけが無い。誰か一人を選べないなら潔く三人全員諦めるべきなのに。
最低だ。自分が情けなくなる。
今頃になって恋心を自覚した上に、誰とも離れたくないと我儘を言う傲慢な自分に嫌気がさして涙が溢れてきた。
泣くだなんて狡いと必死で止めようと涙を拭うけれど、後から後から溢れてくる涙は簡単に止まりそうにない。もうこの場から早く立ち去ってしまいたい。
「歩、泣かないで」
千花の手が歩の肩に置かれて、泣きながら歩は千花を見た。
「確認するけど、オレ達三人をそれぞれ好きでいてくれてるんだよね?」
千花の声は優しくて、それが余計に申し訳なく感じでまた涙が溢れた。
声が出せないくらい、子供みたいに泣いてしまって、千花の問いかけに何度も頷くしか出来なかった。
「歩、心配しなくていい」
亮が歩の頭を少し乱暴に撫でて笑顔を見せた。
「俺達は歩がそう言ってくれるのを望んでたんだ」
幸雄がハンカチを取り出して涙を拭ってくれる。
どういう意味か分からず、ポカンとしていると「歩、やっぱり可愛いなぁ」と千花が抱きついてきた。
「千花、ズルい」
そう亮が言って千花の隙間から歩に抱き着く。幸雄も無理やり間をぬって覆い被さる様に抱きついてきた。
「オレ達最初から、歩の事諦めるつもりなんてなかったんだよ」
「……え?」
三人に抱き着かれたまま、歩はわけも分からず立ち尽くす。
「何回も諦めようとしてやっぱり無理で、だからもう諦めるのを諦めてとことん歩を溺愛するって決めたんだ」
何かを説明する時、端的に話すのが幸雄。自分のペースで話を進めるのが亮。そして歩にもきちんとわかりやすく説明してくれるのが千花だ。
千花が話す時はだいたい、もう結論が出ていて歩に選ぶ権利はない。
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