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第23話

「歩を三人でシェアしていこうって決めた。その為に何度も話し合って最終的に歩に決めてもらおうってなった。歩が嫌ならシェアはしない、友人のままでいる。もし歩が三人全員を選んだら、オレ達はその意志に従って三人で歩を愛すって」  いつの間にそんな話し合いをしていたのか、歩は全く気が付いていなかった。知らないところで友情の危機があっただなんて。 「僕が……三人共を選ばなかったかもしれないのに……」  やっと三人が歩から離れて、顔を見合わせて笑った。 「だって歩はオレ達を好きだろ? 今まで誰とも付き合った事も無い、作る気もなかった。歩は鈍感だから自分じゃ気が付いてなかったみたいだけど、オレ達の事ずっと恋愛感情を持って見てたから、自覚するまで待ってたんだ」  亮が得意げに話しながらくしゃくしゃと歩の髪を乱す。 「まさかこんなに待つとは思わなかったけどな」  幸雄が呆れながらも優しく微笑む。 「いい加減、自覚させてやろうってなったからちょっと荒療治だったけど歩に選択させたんだよ。一人か、ゼロか。三人全員選ぶってわかってたけどね」  開いた口が塞がらない。  三人からの告白も、キスも、一人かゼロかの選択肢も、全て三人が仕組んだ事だったなんて。  けれどそんなやり方をしない限り、この気持ちに気付く事はきっとなかった。散々悩んで、悲しい思いも沢山したけれど、この答えを三人が待っていてくれた。 「そうと決まれば四人で住む部屋を用意しなきゃな」 「え、四人で!?」 「今のままじゃなかなか会えないだろ? 歩をシェアするには全員で同じ家に住んだ方がいいに決まってる」  この時になって漸く歩は気が付いた。  三人は最初から四人で一緒に暮らす事までを計画していたのだと。  歩自身に三人全員を選ばせて、逃げ道をなくすことを。 「言っとくけど、三人全員選んだんだから、三人全員の愛情を受け止めなきゃダメだよ?」 「え……?」 「キスなんかじゃ足りないよ? その先も期待してるんだから、ちゃんと三人、愛してね?」  ああ、違った。一緒に暮らす事までが計画だったのではなく、三人の欲望を受け入れる事までが計画だったのだと血の気が引く音を聞きながら歩は悟った。  三人を全員選ぶ。それはつまり、三人全員を受け入れるという事なんだと今になって自分が選択した事が重大なものだったのだと気付き、歩は一抹の不安を抱いた。 「……もしかして……全部、三人の思い通り……?」  昔からこの三人が一緒になって悪巧みを考えたら、それに勝てる人間はいなかった。それぞれが長所と短所を活かして補うせいで完璧な計画が出来上がるのだ。 「え?」 「なんの事だ?」 「気のせいだろ?」  満面の笑みで答える三人はまるでイタズラに成功した子供みたいな顔をしていた。

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