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第25話
三人をそれぞれ恋愛対象として好きになっていた事を自覚した今、甘やかされるから別れたいとは思わない。ただ今までは、自分が頼りないから心配して世話を焼いているのだと思っていた。
勿論、それもあるだろう。けれどその殆どはただ歩を好きだからという理由だけで成り立っている。同時に三人ものハイスペックな同性から護られていれば、同じ男としてあまりにも不甲斐ない。
「僕、こんなに甘やかされていいのかな? 何かお返しした方がいいんじゃないのかな?」
何をお返しすればいいのかは今は思いつかないけれど、三人が何か望むなら出来る範囲でお礼をしたい。
「歩はそんな事、気にしなくていい。俺達がしたくてしてるんだ」
「でも……」
「歩、俺達は歩が笑っていてくれたらそれでいいんだ。今まで会いたくても予定が合わなかったりしていたのが、今は毎日同じ家で過ごす事が出来る。歩がそこにいなくても、歩と同じ空間で暮らしている事が俺達三人は凄く幸せなんだ。甘やかしたいから甘やかしてる。だから嫌だと思わないでほしい。ただ、迷惑だと思ったらハッキリ言ってくれ。今は皆舞い上がって歯止めがきいてないんだ」
信号待ちで停車した際に、幸雄が歩の頭を優しく撫でた。
「俺達が歩をシェアしてると考えないで、歩が俺達をシェアすると思ってくれ」
「僕が……」
三人三様、得意な事も苦手な事も、好き嫌いも違う。性格も違えば、振る舞い方も違う。そんな共通点が何一つない三人が唯一、誰にも譲れなくて諦められなくて大切な存在。
一人一人の想いの大きさや重さが計り知れないほどありすぎて、歩の両手をギリギリまで開いても抱えきれない。それだけの愛情を毎日、休むこと無く注がれ大事にされてきた。
「俺達は歩が居たらそれでいい。何もいらない。見返りが欲しくて好きになった訳じゃないんだから」
「……うん……ありがとう……」
幸雄はそう言うけれど、何か返したいと本気で思っている。三人が喜ぶようなもので、自分の気持ちがきちんとこもっているもの。
注がれた愛情には足りないかもしれないけれど、自分だって三人が本当に好きだから。その気持ちをもっと何かで伝えたい。
まだそれが何かは分からないけれど、必ず見つけて届けたいのだ。
物を贈るのは違う気がする。それぞれの好みや趣味が全く違うから同じ物は買えないし、別々の物をあげて差がついていると思われても嫌だ。
三人が納得する、三人が好きなもの。そんな物があればいいのに。
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