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第26話
「歩、着いたけど?」
考え込んでいるうちに車は職場の近くに着いていた。ハッとしてシートベルトを外すと、「ありがとう」と幸雄に伝えてドアを開ける。
「ああ、帰りは気を付けて帰れよ。歩に何かあったら三人共、生きていけないからな」
「大袈裟だってば」
苦笑して車から降りてドアを閉める。幸雄が走り去るのを見送りながら、自分はどうだろうと考える。
三人のうち誰か一人でもいなくなったら、今の自分は耐えられるだろうか。
これがただの親友という関係のままだったとしても、酷く哀しくなるだろう。そもそも誰一人として離れたくなかったから三人全員を選んだのだ。突拍子もない選択を怒りもせずに「最初からそのつもりだった」と受け入れてくれた。
歩が何よりも、誰よりも大切で愛しいから、と。
趣味も好みもバラバラな三人が唯一、歩だけ同じ気持ちで好意を寄せてくれている。
「あ……そっか……」
三人が好きな物の答えはすぐそこにあった。
これなら三人も納得してくれるはずだ。
しかし、そういう事に対して全くと言っていい程知識のない歩には未知の世界すぎてどうしたらいいか分からない。
「……とりあえず、調べてみよう」
携帯を取り出して思いつく言葉を検索にかけながら社内へと入っていく。
いつも三人に分からないことは任せきりだから、せめて今回は自分の力で何とかしたい。
そう強く思ったのも束の間、検索結果が表示されそこに書かれていた内容を読んだ歩は慌てて画面を消した。誰かに見られでもしたらヤバい内容の羅列に、出社したばかりだというのにじんわりと変な汗が出ていた。
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