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第28話

「どうした?」  歩のただならぬ雰囲気に心配顔になる幸雄。首を傾げる千花。怪訝そうな表情の亮。 「お願いが、あるんだ」 「お願い? オレ達三人に?」  千花の問いかけにこくんと頷く。 「僕を、三人で抱いて欲しいんだ」  時が止まったかと勘違いする程、長い沈黙が訪れた。その間も歩の心臓はドキドキとうるさく響いていた。 「……あの、言ってる意味、わかる?」  誰からも何の反応もなく、不安になった。  こんな事を自分から言うのはやはりはしたないと思われただろうか。それともそこまでの関係を誰も望んでいなかったのかもしれない。だとしたら一人でその気になって予習までして、恥ずかしくて穴があったら入りたい。 「三人で……は、無理、かな?」  一人一人、順番に日にちをずらすべきだっただろうか。デリケートな問題だし、三人一緒に、なんて無神経だったかも。けれど同じ日に一緒に自分を捧げる事が歩に出来る一番の誠意だった。 「歩、自分でそうしたいって思ったの?」  長い沈黙の後、最初に口を開いたのは千花だった。  歩は一心に首を縦に振って何度も頷いた。 「無理してないか?」  亮の心配そうな声に今度は首を横に振った。  無理ならこんな事言ったりしない。そうして欲しいと思ったから自分から提案したのだ。 「一度始めたら、途中でやめたり出来ないぞ」  幸雄の言葉に内心、少し不安になった。  性行為の知識は元々人並みにはあったけれど、それはあくまで異性に対してだ。同性同士のやり方なんて調べてみるまで知らなかった。  抱く方なのか、抱かれる方なのか、それさえ分からなかった。ただ、三人とそれぞれベッドの上で裸になった時に自分が相手を抱くイメージが出来なかった。  きっと三人も『歩は抱かれる方』と認識しているだろう。  抱かれる方で構わない。もちろん未知の世界だから怖いけれど、三人が自分を傷付けるような乱暴な事はしないと信じている。

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