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第2話
「理央 。お前、今年も行けなかったのかよ」
「うるさいな。そっちだって、土屋さんとのハロウィンデートつぶれたくせに」
「………頼むから、傷口をえぐらないでください」
大学内にある食堂で、佐々木は幼馴染みである村上洋一 と話していた。話すというより、互いの傷を舐め合うというか、慰め合うというか。
佐々木の場合は、片想い相手の木崎の誘いを断ってしまった。自分に勇気があれば、木崎の誘いを受けられただろうに、どうしても出来なかった。
村上の場合は、年上の恋人との約束が恋人の仕事の関係でパーになった。恋人である土屋は、時間を作ると言ってくれたのだが村上の方から断ったのだ。
そしてハロウィン当日になって、こうして2人集まっているのだ。周りがコスプレをしてお祭り状態の中、この2人だけしんみりとした空気をまとっている。
「あー。ダメだ。俺、このままここにいたら心折れそうな気がする」
「ふーん」
「と言うことで理央。俺は早めに家に帰る。そして部屋にこもってやる」
「帰れば?俺は、ここで待ってる人がいるから」
「待ってる人?誰だそれ」
「ん?ミイラ男だよ」
周りのテンションについていけず、疲れたらしい村上はそそくさとその場をあとにしようとした。しかし、佐々木が待っているという「ミイラ男」がすごい気になるらしい。そわそわ、チラチラと佐々木の方を見ながら、なかなか食堂から出ていこうとしない。
「…………帰るんだろ洋一。だったらさっさと帰れ。俺が1人じゃないと、ミイラ男は来てくれないんだよ」
佐々木が手で村上を追いやると、渋々と言ったように食堂から出ていった。
村上が食堂から消えたのを確認すると、佐々木はそわそわしながらミイラ男が来るのを待った。
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