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第4話
が、ガサガサと何かを漁る音でもう一度目を開いた。
「なんだそれは」
すると彼は、俺の身体にビニールに入った白い服を合わせていた。
少々興奮した様子で嬉しそうに私に見せびらかして来た。
大人しいデザインだが装飾自体は細かい。
その一つ一つが丁寧に創られた服なのだというのは見て取れた。
「ご主人様に似合うと思って!」
「は?」
力一杯に発せられた言葉に目が点になった。
ウキウキという文字が浮かんで見えそうな程、浮かれながらビニールを取り外す。
そして彼は、奥にある大きな食卓の上に、服を広げた。
どこで覚えたのか、皺が出来ないように上手く持ってくると、彼は私の腕を袖に通す。
脱がせたシャツよりもしっかりとしたデザインの刺繍が刻まれた白いシャツを、私はされるがままに着せられていく。
先ほどとは逆に、下から丁寧にボタンを一つずつ閉じられる。
次に持って来た白いズボンを、またしても肩に手を置くよう促され、片足ずつ履いて行く。
普段使っている物とは違うベルトを通され、きつくも緩くもない丁度いい位置で止められた。
そして、顔さえ戻ってれば自分でやる、と言いたくなる程。
もたもたとした慣れない手つきで白のネクタイを結ばれる。
何とか彼が結び終えたネクタイの出来が気になっていると、次に来たのはベストだった。
袖を通せば、彼が下からまた丁寧にボタンを留めていく。
一体いつサイズを図り、どこで買ってきたのか。
どれを着ても不快感やきつさ、動きにくさ、重さを感じさせない。
明らかに私の為だけに用意された衣装だった。
最後にジャケットを羽織り、白の手袋を片手ずつ、彼の手ではめられていく。
「やっぱり似合う」
「……何がしたいんだお前は」
それは、いつもとは違う真っ白な、結婚式を思わせる……
この地で言うタキシード、だったろうか。
ハロウィンには到底似合わないそれを着せて、彼は満足そうに笑っていた。
流行の歌を口ずさみながら、彼は私の髪もセットしていく。
そういえば最近は『イメージ通りの吸血鬼』、と言った髪型はしていないな。
などと思っているうちに、オールバックが完成していた。
脱がせた癖に着せた以上、多分したい事に邪さはあまりないのだろう。
するりと、マネキンから顔を取り外され、元の私自身のあるべき場所へと戻される。
―――戻すのが早くないか?
と思いながらあまりの何もなさに驚きじっとしていると、左手を持ち上げられる。
はめた手袋を外されて、ポケットから取り出した指輪が薬指にそっとはめられた。
まさかとは思うが、婚姻の真似事がしたくてこんな大事をしたのだろうか。
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