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ある日の放課後

「カイ、大丈夫か?」 侑は隣を歩く祥の背中に向かって問いかける。 そこには青い顔をしたカイが背負われておりコクリと頷いた。さっきの諸々で悪化したらしい。 「あと少しだから頑張れよー。ほら、もう橋に着いたぞ」 祥がのんびりと言う。お調子者もこういう時は頼りになるな、と失敬な事を思いつつ侑が顔を前に向けると確かに小さな橋が見えてきた。 その向こうに、彼らの住む村が広がっている。 「あら、お帰りなさい坊っちゃん達」 「お帰り。カイくんどうした?具合悪いのかい?」 最後尾を歩く慶弥がその古い橋を渡り終えると、四人に気付いた通りすがりの人々が声を掛ける。 多分ここを初めて見た人の多くは、過去にタイムスリップしたかと思うだろう。 家屋は木造建てで井戸があり、畑や田んぼに囲まれている。車などは全く見当たらず、それを良いことに家畜の鶏が悠々と目の前を横切って行く。 そんな時代に取り残されたような結之(ユエノ)村は総人口80にも満たない村だが、住む者の気質は穏やかだ。 「うす」「ただいまー」「平気です…ただいま」「……ま」と祥、侑、カイ、慶弥もそれぞれ独自に挨拶した。

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