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ある日の放課後

学生鞄をブラブラさせながら侑は目的地に向かう。 日差しが弱まりつつある空の下では、村の最北に位置するその神社は一層寂れて見えた。所々が欠けている石段を軽快に上がる。 「あっ!来た来た。遅いぞ人手~!」 鳥居を潜った早々かけられた女性のその言葉に、侑は「うわーすごい歓迎」と肩を落とす。 「待ってたよぉ」と飛び跳ねてくる彼女は、黒い艶のある長髪に程よい褐色の肌の持ち主。モデル体型にこれまたモデルのような綺麗な顔には、意志の強い目が宿っている。 彼女の名は境木 依那(エナ)、齢22。どこかで見たカラッとした笑顔は、恐るべきかなDNA。祥の実妹である。 「こらこら依那ちゃん、侑くんには侑くんの準備があるでしょ」 うんざり顔の侑を見かねたのか、一人の青年がやんわりと口を挟んだ。優しげな面立ちだが、サラサラの髪の下の目は思慮深さを感じさせる。 彼は境木 夏目(ナツメ)。依那の夫の21歳。

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