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ある日の放課後
「あ、そっかぁ。流石なっつん!」と、依那は独自のアダ名で誉めつつ夏目に抱き付く。夫婦だからって青少年の前でイチャコラはやめて欲しい。
「いいよ。今日はカイの奴も調子悪いし、提灯飾りくらいやってくわ」
目のやり場がない侑はさっそく制服の上着を脱ぎ腕捲りをし、提灯の紐を手早く結ぶ。
力の要らない提灯飾りは子供の仕事だ。「ありゃ、カイはホント体弱いね~」と、こちらに顔を向ける依那が視界の端に映る。
「ほづるも寝込んだみたいだし、カイの所は皆お休みかもね」
「へー、そうなん…うおぉ母さんじゃないすか」
依那が喋っているのかと思いきや別人だった。地味に熱中していた侑は声に気付いて仰け反る。
いつのまに現れたのか、彼の背後には仁王立ちをする一人の女性がいた。30代後半と思われる彼女は小柄で目はクルリと大きく、結び上げた黒髪は少々癖がある。
名は、境木 東雲(シノノメ)。侑の母親であり、息子が最も頭の上がらない人物だ。
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