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ある日の放課後
「平和なツラしおって…心から詫びとらんだろ!」と図星の一喝をしつつも、ハアアと実砂緒は己を落ち着かせるように長い長い息を吐く。
「…まあええ、時間がない。とっとと禊してこい。ナギ」
老婆が呼ぶと、その横から「はい」とおずおず一人進み出る影。その人物を確認した侑は「おっ」と笑顔になった。
もさっとした黒髪に黒縁眼鏡。長身でひょろりとした体型。表情もよく分からずパッと見年齢不詳だが侑と同い年の少年である。
彼は実砂緒の孫、結之 ナギ。
「よーナギ、久しぶりじゃん!元気だったか?」
侑は気さくに話しかける。
ナギはたった今記した通り侑と同年、つまり中学生だ。しかし、侑は彼と暫く顔を合わせていない。
中学が違う訳でもクラスが違う訳でもなく、彼は不登校なのだ。「う、うん」と少々気まずそうにナギは頷くと持っていたタオルと着替えを侑に手渡す。尚も話しかけようとする同級生を避けるように素早く部屋を出ていった。
「…すまんな、侑」
さすがに申し訳なく思ったのか実砂緒が詫びる。侑は「あ、いやいや」と手をパタパタ振った。
「ばーちゃんが謝ることじゃないし」
「『実砂緒さん』と呼べ」
「アッハイ」
再び実砂緒を怒らせてしまった侑はちょっとしょんぼりして、備え付けの風呂場へトボトボ向かった。
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