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祭
結之村は武道の村だ。男女問わず殆どの村人が何らかの武道をたしなんでいる。
侑自身も剣道と杖道を幼い頃から習っており、カイは弓道、慶弥は柔道と、子供たちも例外ではない。大人と子供では差がありすぎるので大会に侑たちは出られないのだが。
そう、子供に花を持たせられない位には本気なのである。大人げないが競っている村人たちは皆真顔だ。
「侑兄」
「げ、見つかった」
ぽりぽり菓子を食べながら、まさに観戦体勢に入っている侑に慶弥が声を掛ける。暗がりで油断していた中学生は遠慮なく渋い顔をした。
「もう化粧落としちゃったんだ…」
「え、何て?」
今度は年上としての自尊心で気まずい中学生の前で、慶弥はぽつりと呟く。さっきの己の姿が小学生のツボだったなどと侑は知る由もない。
「う、うるせージジイ!」
「ちょっと何なのお前反抗期?」
だいたい慶弥は沸点が低いが、いつもより理不尽な気がする。侑は釈然としないながらも「ほらま、食え」と菓子を差し出した。
ぶすっとしながらも慶弥はごっそり取っていく。やっぱ腹減ってイライラしてたんだな、と勘違いの侑は一安心した。
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