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結之村に住む人々は、結之姓か境木姓のどちらかだ。 同姓の侑たち三人が兄弟で無いのは、つまりそういう事である。たまたま全員境木さんなだけだ。 そしてその境木の名を持つ直系者には、共通してある特徴が存在する。 「…絆創膏はがれてる」 菓子で腹を膨らし、人心地ついた慶弥が指摘する。 先ほどの舞の最後で切った侑の手当て――という程の傷ではないけれど――が甘かったらしい。「お、サンキュ」と侑は貼り直すも、慶弥は複雑な顔をしている。「あのさ」と不満げな口調で言った。 「マジであんの?池の底に武器とか」 いつからある伝承なのか、明確には恐らく誰も知らない。そのくらい古くて時代錯誤で、非現実的な話だ。 侑が自ら血を落としたあの池。あの池の底には、境木の血統者だけが手に出来る数種の武器が眠っているという。 なぜ数種なのかはこれまた謎だが、縁の者なら誰でもどれでも使えるという訳ではない。 『一つの武器が一人の人間を選ぶ』のだ。例えば―― 「中二病まっさかりな話だけど慶弥、残念ながらマジだ。祥さんの見たもん」 どだい信じろと言う方が無茶な内容だ。同じ疑問を持った過去の侑は、祥に似た質問をした。 すると百聞は一見に如かず。実際に見せてくれたのだ。『誰にも内緒な』と前置きして。 正直あれは凄かった。今でも忘れられない。 祥が池に掌を翳すと水面がザバザバと波立ち、ぐるぐると渦巻き。 その中心から。 美しく黒光りした、大きな槍が現れたのだ。

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