22 / 55
祭
「祥兄のは何だったんだよ?刀?」
慶弥が鼻息荒くして訊ねると「まーまー」と侑は宥める。
丁度その時、祥が相撲に打ち勝ったらしく一際大きな歓声が上がった。隣では依那が剣道で無双している。派手な兄妹だなーと侑はしみじみ感心した。
「慶弥ももう少ししたら仲間入りなんだから、その時教えてもらえよ」
それだけ告げると侑は欠伸をして立ち上がる。「あと全部やる」と隣の小学生に菓子を渡した。
「え、帰んの侑兄」
「ん、ばーちゃ…実砂緒さんに見付かったらヤバイから。『宿題やらなきゃいけない』つって出てきちゃったし」
実砂緒は侑にとって舞の先生でもある。毎回出番の後には指導という名のお叱りがあるのだが、今日は色々あって疲れてしまった。
よって侑は逃亡を謀ったのである。有難いことに東雲は黙認してくれた。
嘘を吐いた生徒が悪いのは一目瞭然だけれど、老婆の説教が長いのを知っている慶弥は思いきり嫌そうな顔をする。
正直な年下に侑は笑い、「じゃな」と神社を後にした。ぽつぽつとある、外灯を頼りに侑は帰路につく。
――そういや慶弥の誕生日いつだっけ
マイペースで歩きながら侑はふと思う。
武器に選ばれる時期は一定にして決まっている。境木の子が10歳になる日だ。本当に、慶弥ももうすぐだ。
しかし。
現在14歳である侑は、武器がない。手にしていない。
選ばれなかったのだ。
ともだちにシェアしよう!