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暗闇
幸い、実砂緒が危惧する事態は今のところ起きていない。祥が確かめたらしいが、武器も変わらず綺麗な状態だそうだ。
その点に関しては良かった。しきたりは色々と面倒臭いが侑はこの村と村人が好きであり、彼らが安心して暮らせる為なら多少の血くらい投げ出せる。
――だけど
そこまで考えて侑は頭を振る。
やめよう。考えてもどうにもならない事だ。そう気を取り直し夜空を見上げた。
花冷えというやつだろうか、今は春だけど夜は冷えていて星がくっきりと映えている。月も明るい。
しかし、一瞬にしてそれが真っ暗になった。
侑は最初、外灯の電球が切れたのかと思った。村の外灯は実にレトロで度々メンテナンスをしている。
だけど、違った。シュッと耳の上で擦れる音がして後頭部が圧迫される。目の辺りに何か、布らしきものが当たっている。
――目隠…し?
「ちょっ、だ」
誰、と問おうとした侑の腕が何者かに捕まれる。力任せに引っ張られ後ろ手に、今度は紐で両手首を縛られた。鞄が地面に落ちる。
驚いた侑は抵抗しようとするもそのまま引き摺られた。ガラッと木製のドアが開く音がして中に放られる。
床に転倒するのを覚悟した侑の体が柔らかく受け止められる。下の感触と匂いから藁と判断できた。
そういえば、ここら辺には今は使われていない古い納屋が幾つかある。その内の一つなのだろう。
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