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翌日

「じゃ、じゃあ、どうして…」 鞄が自ら動いてスタコラした訳でもあるまい。子供の常識的な追求に「おう、それがな」と祥は腕を組む。 「よくよく聞いたらなあ、どうやら慶弥のヤツ手提げん中に食べかけのスナック菓子を入れてたらしいんだな。で、今は春だ。冬の間にすっかり腹ペコになった小動物の格好の獲物ってこった」 菓子。それは十中八九、侑が昨晩あげたものだろう。 加えて麓先にあるこの村には、野生のウサギや狸が頻繁に現れる。 「でも小動物じゃなくてイノシシや熊の可能性もあるからな、念のため警戒してんだよ。ま、それは無えとは思うんだが…慶弥怖がっちまってなあ。コイツ気ぃ弱いとこあるだろ?お陰で俺らもよく眠れなかったわ」 そうカカッと豪快に笑う、寝不足には見えない祥。 察するに慶弥は昨日彼らの家に泊まったらしい。父の薫が不在なため心配だったのだろう。祥は意外と世話焼きだ。 「お前も無事で良かったぞ、一人で帰ったらしいじゃねえか」 祥の発言に侑の体が強張った。 出来事で忘れかけていた例の痛みを意識する。冷や汗がこめかみを伝う。急速に喉が渇く。「う、うん」とだけ辛うじて言えた。

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