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翌日

「じゃ夕方まで慶弥のお守り頼むな、薫さんが迎えに来ることになってっから。鍵かけて大人しくして…あ、雨戸も一応閉めとけ。何かあったら俺か東雲さんに電話。もしくはそこら辺に誰か居るから叫べ」 東雲たちと同じく瑠璃は神社の片付け、そして祥は熊避け及び罠作りに行くらしい。 ガラにもなくテキパキ指示するサボリ魔に、侑は場合も忘れて吹きそうになる。非常事態に張り切るタイプがいるが、まさに祥はその人だ。 「あ、あの、これ、どうぞ」 空気を読んで侑が笑いを抑えていると、ととと、と小走りで寄ってきた瑠璃がグーにした手を差し出す。 すぐに両手でお碗を作った少年の掌に彼女が落としたのは、数個の飴。ミルク味の、舌を出している有名な女の子がパッケージのものだ。 「あ!侑お前、るんちゃんから飴もらったな!ずるいぞ返せ!!」 礼を言おうとした侑は祥に意味不明な因縁をつけられた。が、無視する。いつもの事だ。「ありがとう」と笑顔で告げると瑠璃ははにかむ。 ちなみに『るんちゃん』とは祥が付けて祥だけが使っている瑠璃の愛称だ。祥・依那兄妹 ネーミングセンス いまひとつ。字余り。 中学生に嫉妬する夫を慰め、瑠璃は礼儀正しく侑に向かって頭を下げる。お暇するようだ。 妻に感化された祥は、むすっとした顔を崩さないまま「熊が出たら鼻っ柱を狙えよ」と現実的でないアドバイスを残して去っていく。 一方、苦笑して二人を見送る侑の胸には、少しの違和感が生じていた。

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