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翌日
夕方。祥の話通り訪れた約束の人物は、侑の家にそのまま待機していた息子にスライディング突撃した。
童顔で学生のようにも見えるが実年齢は三十路半ば。黒髪の大人しそうな外見に反して耳にはシルバーのピアスが光っている。
そんな慶弥の父親、境木薫は我が子をしっかりと抱き締めた。なんと目は涙ぐんでいる。男泣きだ。
「も~~~ビックリしちゃったよ慶弥~~!怖かったね怖かったね、父ちゃんが来たからにはもう安心だよ!熊公から守るからね!!」
もはや説明は不要かもしれないが彼は重度の親バカだ。
「と、父ちゃんくるじい…」と圧迫された慶弥が訴えると、薫は我に返って離す。「ごめんな、でもな、父ちゃん心配でな」と混乱気味に言う。
この様子では、デジカメの事を言われてもきっとどうでも良いだろう。大方『また買えばいいよ』で済まされるはずだ。
「侑くん、慶弥の面倒見てくれてありがとね」
嵐のような薫は落ち着くと、ようやく侑に目を向けた。静観していた侑は「あ、いえ、はあ」と気の抜けた声しか出ない。相変わらずの親バカ、いやバカ親パワーに圧倒されていた。
「今日は父ちゃんのお土産食べような」と慶弥を連れて玄関に向かう薫の後ろを見送るためついて行く。
「気を付けて薫さん、慶弥」
「うん、ありがとう。侑くんもウチに遊びに来てね。透子(トウコ)さんも待ってるから」
透子さんとは慶弥の母親だ。侑は一瞬視線を落とし、「うん」と微笑んだ。
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