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呉越同舟

その場に留まっていても詮無いので一同は村への道を並んで――祥と虎太朗は離れて――歩き始める。重い空気が漂っており、なにこの状況つらいと侑はひたすら心中で嘆いた。 そんな折、後方に続いていた虎太朗から「侑さん」と声をかけられる。侑はビクッとして「はいっ!」と凄くいい返事をしてしまった。カイには申し訳ないが、祥との方が親しい事もあり虎太朗は苦手だ。 「どこか怪我をしているのですか?歩き方に少々違和感がある」 侑の時が一瞬止まる。うなじを汗が伝った。 さすが医者というべきか、うまく隠せていると思っていた彼は密かに焦る。 四方八方から『そうなのか?』と案じる視線も飛んできて生きた心地がしなかった。 それでも「え、そうですか?特に怪我とかしてないですけど」と、なけなしの演技力をフル動員してすっとぼける。 「ならいいですが…」 虎太朗の感情表現は侑にはイマイチ判然としない。 だが、すんなり引き下がってくれた。納得するしてないはともかくバレるわけにはいかないのだ。 一昨日犯された時の後孔が、数ヶ所切れているなど。 「うぇ…きもちわる…」 村に到着し親子二組と別れ、祥と夏目に自宅まで送ってもらった後。そのまま侑はトイレに引きこもった。 学生鞄の奥にしまってあったチューブ状の小さな物を取り出し、曝け出した尻の穴に塗る。襞の感触がクリーム越しとはいえ指先に触れ、その不快さに身震いをした。

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