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呉越同舟

「ほづるさん元気になって良かったね」と、侑は一昨日に母親が言っていた事を思い出す。東雲は頷いた。 「祭だったから様子見に行けなくて心配だったんだけど、虎太朗が頑張ってくれたみたい」 介護士の資格を持つ東雲は、主に村の高齢者とほづるの世話をして回っている。 普段はカイの家に行くのだが、たまにこうして侑宅に散歩がてらほづるが訪れる事がある。正確には東雲が連れ込み御茶やら菓子やら振る舞うのだけれど。彼女は持て成し好きだ。 「つか、ほづるさんと散歩したの?危ないじゃん、もし熊出たらどうすんの」 人には勝手に出歩くなと言っておいて他所様を連れ回すとは。 息子の常識的な非難にも、しかし母親は悪びれない。「依那が送ってくれたから平気よ」とシレッと返した。それで黙るのも悔しいが黙らざるを得ない。 「いや!違う黙らない!母さん、なんで祥さんと虎太朗さんを俺たちの送迎班にいれたの?すっげえ空気悪かったんですけど!」 「あら、あの二人いいトシしてまだ仲悪いの?」 「いいトシして超仲悪いよ!!」 侑は思い出して抗議するも東雲は他人事だ。しかし「あのね、母さんが決めたんじゃなくて行ける人に各々立候補してもらったのよ。その方が手っ取り早いでしょ」との母の言に彼は反省する。 本当に東雲にとって他人事だった。つまり祥と虎太朗は偶然かち合っただけらしい。まったく、仲が良いのか悪いのかあの二人。 なんだか妙に疲れてしまい侑は脱力する。 その前で、ほづるは相変わらずにこにことしていた。

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