47 / 55

適性

「壬生(ミブ)ちゃんよ」 「なんだい境木ちゃんよ」 平日の昼休み。給食を食べ、元気に校庭で遊ぶ若者一年生を三階の教室で眺めたまま侑は口を開いた。 『壬生ちゃん』と呼ばれ返事をした、後ろの席の少年はスマホを弄っている。前髪を長めに流した大人びた顔立ちで、女子に人気があるのは余談。 「ちょっとケータイ貸したまえよ」 「またかね境木ちゃん。いい加減買いたまえよ」 そこまで会話を交わすと二人は視線も交わし「いつまでこの喋り続けんの」と爆笑した。箸が転げても笑える年代である。 「三分間」と渡された侑は「けちサンキュー」と罵倒と礼を同時に言い操作し始めた。やり方は以前壬生に習っている。 ――雑食…スナック菓子って、雑食に入るのか? 検索に入力したワードは『熊』『食べ物』。図書室で借りた本には、侑の知りたい情報が書かれていなかったのでネットに頼る事にした。 だが、それでも微妙だ。パッと見て熊は魚も食べて木の実も食べるらしい。それでも肝心のスナック菓子の件は載っていない。 誰も試してないのかもしれない。いや試したら動物虐待か?というか油断したら試験者死ぬよな、などと思っていたら手に持っていた携帯が消えた。 もう三分経ったらしい。長方形の機器は壬生の元に戻っていた。容赦のない親友に、侑は机に突っ伏しふて寝を決め込む。

ともだちにシェアしよう!