49 / 55
適性
「えっ、しゃ、写真!?やだよ、だ、ダメだよっ」
慌てるナギを見て、やっぱりなぁと思う。
放課後、送迎班の大人らと別れた侑は早速ナギの家へと足を向けた。
侑の自宅から五分程のそこは年期が入っていて、だがデカい。ここに不登校児は祖母の実砂緒と二人で暮らしている。
正直居て欲しくなかった実砂緒は運良く不在だった。ナギを玄関先から呼ぶと、寝ていたのか普段より頭を爆発させた引きこもり中学生は出てきた。
プリントを渡し雑談をした後、壬生の要望を伝えてみるとかなりハッキリとした拒絶が返ってきた。
それが今である。拒否するナギは眼鏡がずれるくらいに焦っていて、ちょっと可哀想になった。
「ごめん、無理にじゃねーから。お前、写真撮られんの苦手だもんな。悪かった」
侑の謝罪にようやくナギは落ち着く。
ずれた眼鏡を戻す瞬間に見えたナギの素顔は結構なイケメンだ。すっきりとした精悍な面立ちで、目だけがやたら大きい身としては羨ましい。
「そ、そっか。ごめんね、僕、情けなくて…」
しゅんとするナギに「え、なんで」と侑は目をぱちくりさせる。
「苦手な事とか誰にだってあるじゃん。情けなくなんかないって」
「…侑くんでも苦手な事、あるの?」
無垢な表情のナギの質問に、侑は「なに言ってんだよ、めちゃくちゃあるって!」と握り拳を作る。思いも寄らなかった問いだった分力が入った。
ともだちにシェアしよう!