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適性

「まず勉強だろー、数学なんて先生に『まずはテストで半分取れるようになろうな』って励まされたし。かと言って体育が得意でもねーし球技は好きだけど成績普通だし。リズム感もアレだから音ゲーもイマイチだし壬生ちゃんにバカにされたし。辛いもん食えないし炭酸飲料もちょっとしか飲めねーし」 指折り数えて自分を振り返る――若干ズレてきているが――侑は「でも生きてる!」と誇らしげに締め括った。 大袈裟な同級生の言動に呆気に取られたナギは一拍の後、ぷっと控えめに吹く。 ナギの笑顔を見るのは久しぶりだっため侑は嬉しくなる。「あ、話変わるけどこないださ…」と意気揚々と面白話を始めた。 「あはは、それすごいね!そんなことがあったんだ」 「な、まじウケるよな~!でさ…って、やべ!もうこんな時間じゃん!」 会話が弾んでいた二人だったが、ふと壁時計が目に入った侑は飛び上がる。 熊騒動が起きてから四日。警戒は続いているものの、目ぼしい場所への罠は既に設置されているため子供たちの外出禁止令は解除された。 ただ、それも日が落ちるまで。門限はきっちり決まっており、それを破る訳にはいかない。東雲の拳骨は痛い。「ごめん俺帰るわ」と帰り支度する侑に「うん」とナギも見送りをしようと立ち上がった。 「今日はありがとう、侑くん」 玄関の取手を掴んだ幼馴染みにナギが御礼を言う。侑は振り返ると「水くさいって」と照れ笑いをした。

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