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第三章・三人の王子を殺害した犯人。(1)
(一)
どうやら既に気取られていたらしい。見事に言い当てられたアマデウスは、隠れているのも今さらだと、大人しくベルゼブルの前に歩み出でた。――同時に教会の扉が不気味に軋んだ音を立てながら閉じていく。その音はアマデウスを不安にさせるには十分だった。
会堂の中は窓に嵌め込まれたステンドグラスが月光に照らされ、床を美しく装飾している。折上天井に四角形の柱。ここは昼間に侵入した会堂よりもずっと狭いが、造りは殆ど変わらず優美で繊細なものだった。
――にも関わらず、アマデウスの心情がそうさせているのか、はたまた闇が蠢く時間帯だからなのか。周囲にはもの悲しい雰囲気が漂っている。
湿度が高い所為なのか、ここに来るまでは感じなかった空気はじっとりとしていて重く、不気味だ。まるでこの教会そのものがベルゼブルのようだとアマデウスは思った。
アマデウスの気分は一向に落ち着かない。
けれども恐れを抱いていると相手に悟られてはならない。とりわけ、目の前にいるベルゼブルには――。
自分が臆していることを少しでも知られれば、ベルゼブルは何をしでかすか判らない。彼の前で気を抜くのはあまりにも危険すぎた。
アマデウスと向かい合うベルゼブルのアーモンド色の目は貪欲な闇色をしている。彼は間違いなく何かを企んでいる。
アマデウスは肩にかかったブロンドの髪を後ろへ払い除けると腕を組んだ。毅然とした態度で対峙する。
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