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第二章・尾行。(2)

 裏路地の入り組んだ細い通路はまるで迷路のようだ。進めば進むほど民家が姿を消し、木々が増えていく。次第に足下から石畳が消え、剥き出しの大地に変わる。  ベルゼブルを追ってやって来たここは街外れだろう。彼は差ほど大きくもないひとつの教会の前で足を止め、中へ入っていく。人の気配はまるでない。この教会は新築なのだろうか、木材の香りが鼻の奥を突く。  石畳が埋め込まれた足下は綺麗に整備されている。  おそらくこの先が会堂なのだろう。それらしい装飾が刻まれている両手扉の左右には甲冑を身に纏った像がそれぞれ、切っ先がドリル状になっている大きな槍と大剣を手にして向かい合わせで構え、佇んでいる。  引き続き、アマデウスはできるだけ地面と平衡になるよう身を低くしてベルゼブルの後を追う。 「おれを追ってここまで来ているのは知っている。姿を見せたらどうだい?」  アマデウスが草陰に隠れて扉の前で息を潜めていると、彼は静かに口を開いた。  ――第二章・完――

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