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第二章・尾行。(1)

 (五)  一方、アマデウスの方は――といえば、彼もまた悪魔達の標的となっていた。  彼は懐から二つのダガーを取り出し、軽やかに舞う。向かい来る悪魔のことごとくを討ち滅ぼしていく。  悪魔の大半を蹴散らすことに成功した視界は当初よりも良好だ。おかげで目的の人物を確認することができた。  白の祭服を着た男だ。しかも運の良いことに、相手は自分が良く知る悪魔――ベルゼブル。  ――そう。忌々しい紛い物と行動を共にしたアマデウスの目的は彼にあった。  昼間、アマデウスがこの世界でベルゼブルと再会した時。彼に尋ねたいことは山ほどあった。  ――にもかかわらず、アマデウスが深く言及しなかったのは、教団内に人数が多く、しかも彼ら一般人(ユマン)がどこまで関わっているのかが判らなかったからだ。  アマデウスは彼ら人間に自分達悪魔の存在が知られることを懸念したのだ。  そしてアマデウスはどうしてもベルゼブルと二人きりで話し合う必要があった。 「――――」  ベルゼブルは、自らが放った悪魔達(しもべ)が次々と消滅しているにも関わらず、()したる支障はないと言わんばかりに背を向け、去って行く。  アマデウスは彼に気付かれないよう距離を置きながら、ベルゼブルの後を追った。

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