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第二章・Grigori (8)

 司祭クラスの誰かなのだろうか。  それとももっと大きな、組織がかった何かか――。  ――しかしどうも人間(ユマン)の仕業とは思えない節がある。ライオネルがそう考えたのは、悪魔のことを知り尽くした相手でなければまずはこのような薬剤を開発できる筈もないと思ったからだ。  ともすれば、淫魔が口にした『ベルゼブル』という存在も気になる。果たして彼がすべてを目論んだ張本人と言えるのだろうか。  どちらにせよ言えることは、まずは目の前の敵を蹴散らす他に手段はないということだ。  ライオネルは薄闇の中で舌打ちをすると、それを合図に悪魔達はカマキリのような鋭い爪を構えて一斉に突っ込んで来た。  ライオネルは素早く蹴り上げ、ブーツの底に取り付けてあった隠しナイフでまとめて蹴散らす。  ――まずは三匹。  あっという間に空と化した。  その様子を見ていた悪魔らは怯んだ。ほんの僅かだが隙が生まれる。  ライオネルは生まれ出た隙を突く。懐から銀のナイフを三本取り出すと間近にいた悪魔目掛けて投げ放ち、続けて六匹を葬り去ることに成功する。  怯む悪魔達だが、彼らの中には威勢の良い輩も出てくるのは当然だ。ライオネルは胴を真っ二つに切り刻もうとせんとばかりの勢いで薙ぐ鎌を、空中で身を翻し、そのまま両腰のホルダーに収めてあったリボルバーを抜き取り、トリガーを引く。  発砲した弾はそれぞれ額に命中し、金切り声を上げて闇に消えた。

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